薔薇の館千夜一夜物語・・刺青
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その男の人は
その夜から毎晩同じ時間にきて・同じ椅子に座り・閉店とともに帰りました。
何ヶ月もかかって、やっとわかったのは、
彼の名前とお仕事と、歳が38である事、最近妻と離婚をした事、子供がひとりいる事、
暗いでした。
「へぇ〜 独身なんだ〜」
「よ〜し 私も独身だから 立候補ショウかな?」
冗談とも
、、
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薔薇の館 「千夜一夜物語」・刺青投稿者:真美 投稿日:2012年 5月 6日(日)16時42分52秒 |
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実はミカはまだ美智子の岡惚れしてるその男には会ったいませんでしたが・・ 若いミカには美智子から聞くその男には好感が持てませんでした。 大好きな美智子ママの心を持ってゆきそうな、その男に嫉妬してるのかもしれない? 美智子は閉店間際になると、そわそわと落ち着かなくなる自分に苦笑するのです。 やれやれ自称恋多き女もダラシナイモノダわ!そんな独り言を言いながら 今夜も彼が来るのを心待ちにするのでした。 とんとん いつもの足音が聞こえた!! |
薔薇の館 「千夜一夜物語」・刺青投稿者:真美 投稿日:2012年 5月 6日(日)20時43分0秒 |
昼に電球が一つ切れてしまっていたが・・買い置きが見当たらず そのままのなっていたカウンターは薄暗かった! 「こんばんわ」 暗い店内に黒のシャツで入ってきた彼はまるでメフイストのように陰鬱に 感じられた。 「ごめんなさい!」 「電球が一つ切れるとこんなに暗く感じるのね」 美智子は一人ごとのように言いながら、すくう様に大きな瞳で彼を見た。 彼は少しどぎまぎしながらもーーー 「いやーー これもまた雰囲気があっていいですね」 少しの暗さが彼を大胆にしたのか・・ いつものカウンターの入り口の隅の席にすわり、 ぽつぽつとではあったが、いつもより饒舌に話してくれた。 美智子はこんなに席があるのだから、もっと座りやすい席にと、いつも誘うのだけど・・ 彼はこの隅が好きですと、みんなが敬遠するこの席の座るのだった。 客の個性は席の選び方にも表れていて・みんなが落ち着かないと嫌う この入り口の席を好んで座るお客も何人かいるのです。 大抵はとても忙しい人か(入り口が近いから) 気弱な人か(入ってきた人に背中しか見えないから)です 気が弱くて、遠慮深く、控えめの人が好んで座る席を、なぜ彼は好むのだろう! 美智子はそんな些細なことにも、神経を尖らすほど彼を意識しているのです。 「そんなに愛していらっしゃる奥様となぜ?お別れになったの?」 彼の話は、別かれた妻の自慢話のように聞こえた美智子が話の腰を折った。 「あ〜 失礼!俺!今日はどうかしてるな!」 そういいながら・・ 「そういえば・・ワインも置いてあるんでしたよね」 「あら 車は?」 「今日は歩きです」 |
此処で一服・・続いて書いてくださる方へ投稿者:真美 投稿日:2012年 5月 7日(月)07時21分41秒 |
この物語は「刺青」がキーです。 何処でどのようにこのテーマが持ち出されるか、楽しみです! 私の思惑に関係なくどんどん筋を展開してください。 それが「りれー小説」の面白さです |
薔薇の館のカウンターの情報投稿者:真美 投稿日:2012年 5月 7日(月)12時32分17秒 |
上の写真が彼の好む入り口の席です。 また親分肌の方が好むのは下の写真の左側です・・何しろ入ってくる人に 軽く会釈したり!帰り際にご苦労さん!なんて声までかける人も居たりして! 半分経営者気取りの人が陣取る席で、たまには困ったチャンも居ますから、問題の多い席です。 親友ミカもこの席が好きだよね。 私の大きな絵をバックにミカはいつもお姫様の様に愛らしい! 話は戻ります 「薔薇の館千夜一夜・・刺青」 前から続く 今夜は歩きですという!彼に美智子はただならぬ思いを感じた! カウンターからワイングラスを取り出して!ワインの注ぐ手が緊張して 幾分震える、 「貴方も一杯!いかがですか?実は今日パチンコが入ってね!」 そろそろ閉店時間だわ、美智子は独り言を言いながら 行灯の灯を消した。 |
薔薇の館夜話投稿者:ロクちゃん 投稿日:2012年 5月 9日(水)15時34分44秒 |
行灯の灯を消したとはいえ、まさか鍵までも掛けるわけいかず妙に落ち着か ない美智子だった、事実これまでも行灯を消して帳簿を付けて帰り支度をして いる時にいきなり入ってきた常連客もいたりした。 そんな思いもあって心密かに誰も来ないことを祈っていた、美智子自身はど んな噂が流れても構わないが、客商売の立場で考えると特定の客と親しくなる のは褒められたものではないのである。 そんな思いを知ってか知らずか、彼は美智子のグラスに注ぐと目の高さに挙 げて言葉の無く乾杯の仕草をした、つられて同じ仕草で言葉も無く乾杯をした 飲めるくちでもなく、酒の味など判らないのに、一口目のワインは乾ききっ た時の水の様にとても美味しく感じた、少しの沈黙が恐ろしくて。 「まだお名前を伺っていなかったわね」 とにかく会話の無い時間が息苦しくて他愛のない事を聞いた、彼は残りの ワインを飲みほしカウンターにグラスを置くと。 「ヒサカ フユジ」 そう言ってからカウンターのグラスを指差した。 「あら、ごめんなさい、気が利かなくて」 いつもと違う自分に戸惑いながら、二度ばかりグラスを鳴らして注いだ。 「飛ぶ坂でヒサカ、冬の次でフユジ、親はね冬の次は春が来るって付けた ようだけど、何時春が来る事やら」 まだ酔うほどには飲んでいなかったが飛坂はいつもの言葉使いと少し違 っていた、パチンコで儲けた話も嘘だった。 兎に角話し相手が欲しかった、口実としてパチンコを持ち出したので理由 は何でもよかった、飛坂はこのスナックに来てママと話している時がくつろ ぎの時間だし、趣味のパステル画の話など時間を忘れさせてくれた。 |
薔薇の館 「千夜一夜物語」・・刺青投稿者:真美 投稿日:2012年 5月 9日(水)16時51分34秒 |
行灯を消した店内はさらに暗くなり、美智子は閉店の機会を逃した事を 後悔しはじめたとき、パタパタと派手な音をさせてミカが階段を上がってきた。 「あら〜 行灯消えるのに電気が付いてるから、あがってきたのよーー でも お邪魔だったかしら?」 「ううん 大丈夫よ。ミカもワインどうお?」 ミカはじろりと彼を見てから・・ 「もう遅いからかえるわ!」 むくれたように帰ろうとするミカに・・彼はつと立ち上がり僕も失礼します。 「飛坂さま! またどうぞいらしてくださいね。それから個展の絵進んでますか? 楽しみにしておりますわ。」 見送りながら・・ミカにまたあかんベー^をして 人の恋路の邪魔をしてと 大きな身振りでぶつなまねをした。 いつもこんな風におだつと大喜びするミカがじっと考えてる |
薔薇の館 「千夜一夜物語」・・刺青投稿者:真美 投稿日:2012年 5月10日(木)17時24分5秒 |
飛坂は捉えられないような寂しさを抱えながら、階段を降りた。 5月の北国の春はまだ寒い! 遠くにネオンが赤く青く瞬いている。 ネオンは若いときの、あの夜を思い出させ、一人の部屋に帰る気に慣れなかった。 近くの公園をふらふらと歩きながら、美智子を感じていた。 美智子の、あの年の似合わぬ愛らしさと、快活さが、飛坂の心を捕らえてしまう! ずいぶんと明るく全うな人生を歩いてきたのだろうな! それに引き換え、俺なんか! ヒサカは自分人生に影を落とした、あの髪の長いあの娘(こ)を思い出した。 あのこに会わなかったら!俺はこんな思いで人生を生きては居なかったろうし! 美智子に対しても堂々と愛を告白できたのだろうに・・・・ |
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